関東にお住まいのおふたりからご相談をいただいたのは、コロナ禍の真っ只中でした。
「高知にいるおばあちゃんにウエディングドレス姿を見せたい」という強い思いをお持ちだった新婦さまですが、当時は人が集まることや県を越えた移動など、それまで当たり前にできていたことがままならない状況で、とても悩まれているご様子でした。
お仕事柄、新郎さまは県外移動が難しいためお打ち合わせには参加できず、新婦さまとそのお母さまでお話を進めていきました。
新婦さまはせっかく地元に帰ってきているのに、私以外には会わず、どこにも立ち寄らず、毎回 PCR 検査もして感染予防を徹底。その姿に心を打たれました。
これまでと大きくちがう状況下でも…もしかしたら中止になるかもしれないけど…
おふたりのための結婚式を考え、精一杯の準備をすることがプランナーの務めだと思いました。
不安や葛藤を抱えながら迎えた結婚式当日。神前式は山内神社でとりおこないました。
最初はおふたりともとても緊張した面持ちでしたが、式が進行するにつれて少しずつ表情がほぐれていきました。
挙式を終えてご披露宴の会場へ。
ここで初めておふたりは会場をご覧になります。 私はこの瞬間を大切にしています。そこはおふたりの想いが形になった空間だからです。
会場をご覧になると一気に朗らかな表情になり、そして、目には涙が溢れていました。
結婚式をしてもいいのだろうかと悩みながら準備をし、招待状を出して出席できない方がいるとわかると情緒が揺さぶられ、きっとずっと心のどこかに雲がかかっていたのではないかと思います。
でも、会場を目にした瞬間、うれしさや感動が溢れて、雲をどこかへつれていってくれるんです。
おふたりの好みやゲストの雰囲気をふまえて、会場装飾は甘くなりすぎないようにコーディネートしました。
ゲストの方と思い出話に花が咲くよう、ご主人の学生時代の思い出の T シャツも飾っています。
ケーキバイトや感謝の手紙などを通して、ご家族への感謝の想いもしっかりとお伝えすることができたおふたり。 晴れ晴れとした表情が印象に残っています。
後日談ですが、お子さま連れだった妹さまから「あんなに気遣いをしてくれる結婚式は初めてだった」とうれしいお言葉をいただきました。
実はこちらの会場はオムツ替えの設備が整っていないのですが、控室をうまく使えるようにして、また、こまめにお声がけもして、ご不便のないようにしました。
結婚式をつくりあげていく上で、環境や状況を変えることができず、思い通りに進まないことはあります。 それは、私たちスタッフも、おふたりも、同じです。
でも、式当日に後悔のない笑顔ができるように、自分たちの精一杯を出すことが大事じゃないかと思うんです(きみはオリンピック選手か、という話ですが)。
コロナ禍で誰もが思い通りに動けない中、多くのゲストにお越しいただき、さらに式の途中やお開きの後に駆けつけてくれるゲストの姿もあり、おふたりはそれがただただうれしかったのではないかと思います。
当たり前だったことが当たり前ではないと気づいたからこそ、感謝や感動もひとしおに感じられた結婚式でした。