Case #10

心からの笑顔

2020年から始まった新型コロナウィルス感染症による影響は、ウエディング業界にも大きな変化をもたらしました。
思い描いていた結婚式を叶えることができなかった新郎新婦さまも多かったのではないかと思います。

私自身、「これからの結婚式はどうあるべきか?」「私はプランナーとして新郎新婦様に何ができるのか?」と考えることが増えていきました。
そんな中で出会ったのがこちらの新婦さまです。

他の式場で挙式と披露宴をご予定されていたものの、コロナ禍の影響で何度か日程変更を余儀なくされ、最終的にはさまざまな条件が合わなくなって披露宴はキャンセルすることに…。
新郎さまはまたイチから準備をする気持ちにはなれず、新婦さまは「披露宴はしたい。けれど、またツラい思いをするのではないか」と揺れる心情を抱えながらお一人でご相談においでくださったのです。

さまざまなお話をお伺いする中で、おふたりは披露宴を心から楽しみにされていたんだな、ということがひしひしと伝わってきました。
コロナ禍における社会的情勢とウエディング業界の事情に翻弄されてしまったおふたり。
その想いを業界にいる人間の一人として叶えて差し上げたいという、使命感のような気持ちに駆られておふたりの披露宴パーティーを担当させていただくこととなりました。

おふたりがご希望されたのは、ご家族とご友人の方をお招きする、ささやかな披露宴パーティーです。
感染症に対する不安感を少しでも軽減できるよう、屋外の会場で行うことにしました。

おふたりのパーティーでは、私にとって初めての経験となるセレモニーがありました。
それが「たい焼きバイト」です。


新郎さまが持った釣り竿にたい焼きを吊るし、それを新婦さまが食べるという、とても楽しいセレモニーです。

初めてのリクエストでしたが、おふたりのご希望を想像を超える形で叶えたいと思い、「吊るすならどんなたい焼きがベストなのか?お味はどうか?」など、スタッフと共に研究に研究を重ねて準備を行いました。

新婦さまから新郎さまへ向けては、釣り竿にぶら下げたおたまにケーキを乗せたケーキバイトのお返しも。
こちらも初めて経験するセレモニーでしたが、「どんなケーキが最適か?」を研究して、万全の体制で臨みました。

印象的だったのは、ゲストのみなさまの笑顔です。
心から楽しんで、心から笑っている光景は、見ているこちらまで気持ちが朗らかになっていくものでした。

きっとおふたりは、最初は「どんな形でも披露宴さえできれば、それでいい」というお気持ちだったと思います。しかし、ご相談を重ねていくうちに再び気持ちにスイッチが入り、おふたりならではのこだわりに溢れたパーティーとなりました。
どこか宴会のような“ざっくばらん”とした雰囲気は、飾らない人柄であるおふたりらしいものだったと思います。

私自身、おふたりのパーティーをつくりあげたことで、ウエディングに対する考え方やアイデアが広がったように思います。
さまざまな情勢や事情はありますが、「とりあえず結婚式ができて良かった」というレベルではなく、すべてのマイナスを忘れて大きな感動に包まれるような結婚式を実現していきたいと、決意を新たにした次第です。